輸出入ビジネスの落とし穴は無数に存在しています…。
その中でもビジネスですから、絶対に回避しなければならないのはお金の受け渡しの失敗ではないでしょうか?
売り手の立場であれば先に回収したい、買い手の立場であれば商品を受け取った後でなければ不安だ…両者の思いは相反してしまうのでビジネスが止まってしまう訳です…。
それではどうしたら良いのでしょうか?
…そうだ、そんな時こそ、やっぱりL/Cだ!
...そもそもL/Cとは?
そもそもL/CとはLetter of Creditの略称で、日本語では信用状となります。
国際取引において、売り手と買い手の間で取引条件の遵守を保証するための、仲介する銀行が発行する金融文書で、主に買い手(輸入者)が売り手(輸出者)に対して商品代金の支払いを保証する目的で発行され、取引条件が満たされた場合に限り、売り手に対して支払いが行われることを保証する役割を果たします。
遠隔地や異なる国にある取引相手との信用リスクを軽減するために、19世紀以降の国際貿易の発展に伴い普及しました。
信用状は、買い手(輸入者)が自身の銀行(開設銀行)に発行を依頼し、開設銀行が売り手(輸出者)の銀行(受益銀行)に信用状を通知します。
売り手は、信用状に記載された条件を満たす書類(例えば、船積み証明書やインボイスなど)を受益銀行に提出し、受益銀行が開設銀行に送付します。
開設銀行が書類を確認し、条件が満たされていると判断した場合に、売り手に対して支払いが行われます。
この仕組みにより、売り手と買い手の信用リスクが軽減され、取引が円滑に進められる…と言う代物です。
L/Cのメリットとデメリット
やはりL/Cも完璧ではありません。
だからメリットがある一方、デメリットもあるのでそれらを表形式で整理してみたのがこちらとなります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
1 | 取引相手の信用リスクを軽減できる | 手数料が発生する (目安:発行額の0.1%~0.3%程度) |
2 | 取引条件の遵守を保証できる | 手続きが煩雑で時間がかかる |
3 | 支払い能力を証明できる | 発行銀行の経済的な問題により支払いを履行できなくなるリスク |
4 | 異なる国や文化の取引に適応できる | 信用状を悪用した詐欺が存在する |
L/Cには取引相手の信用リスクを軽減し、取引条件の遵守を保証するなどのメリットがありますが、手数料や手続きの煩雑さ、詐欺のリスクなどの大きなデメリットが存在するのです…。
L/C周りの詐欺の具体例
- 偽造信用状
詐欺師が偽のL/Cを作成し、それを本物と偽って売り手に提示することで、商品を受け取る詐欺です。
売り手は、偽のL/Cが発覚するまでに商品を出荷してしまうことがあったようです。 - 不正な書類の提出
詐欺師がL/Cに記載された条件を満たすために、偽の書類(例えば、船積み証明書やインボイス)を作成し、それを提出して支払いを受け取ろうとする詐欺です。 - 取引相手のなりすまし
詐欺師が信頼できる企業や個人になりすまし、L/Cを利用した取引を持ちかける詐欺です。
取引が成立し、商品が出荷された後に詐欺であることが発覚することがあったようです。
L/Cの手順と所要時間目安
L/Cに関する手順と、それぞれにかかる(であろう)所要時間の目安を表にまとめてみました。
あくまでも目安だと言う事に注意してご参照ください。
ステップ | 手順 | 時間の目安 |
---|---|---|
1 | 買い手と売り手が契約を締結 | 通常、数日~数週間 |
2 | 買い手が信用状発行を銀行に申請 | 通常、1~3営業日 |
3 | 銀行が信用状の条件を確認・承認 | 通常、1~3営業日 |
4 | 発行銀行が信用状を通知銀行に送信 | 通常、1営業日 |
5 | 通知銀行が信用状を売り手に通知 | 通常、1~2営業日 |
6 | 売り手が商品を出荷・書類を準備 | 取引条件により異なる (数日~数週間) |
7 | 売り手が書類を通知銀行に提出 | 通常、1~3営業日 |
8 | 通知銀行が書類を発行銀行に送信 | 通常、1~2営業日 |
9 | 発行銀行が書類を確認・承認 | 通常、3~5営業日 |
10 | 発行銀行が買い手に書類を送信・支払いを請求 | 通常、1~2営業日 |
11 | 買い手が支払いを行い、書類を受け取る | 通常、1~3営業日 |
それぞれのステップに対し、前もって準備が間に合わなければ、それぞれにロスタイム分が追加されていきます…。
また書類にミスがあったり、輸出入の際に想定と不整合が発生してしまえば…DISCREPANCY(通称:ディスクレ)の発生です!
ディスクレの処理手順
…大変だ!!
- ディスクレの通知
発行銀行がディスクレを確認した場合、通知銀行および売り手にその内容を通知します。 - 修正の判断
売り手は、ディスクレの内容を確認し、修正が必要かどうかを判断します。
修正が必要な場合は、書類の訂正や補足が行われます。 - 買い手への連絡
売り手または通知銀行が、ディスクレの内容を買い手に連絡し、修正後の書類を受け入れてもらうかどうかを確認します。 - 書類の再提出
売り手が修正した書類を通知銀行に提出し、再度発行銀行に送信されます。
発行銀行は、再度書類を確認し、ディスクレが解消されているかどうかを判断します。 - 支払いの再開
ディスクレが解消された場合、発行銀行は支払いを再開し、売り手に代金が支払われます。
L/Cのこれからとまとめ
L/C輸出入取引において信用リスクを軽減し、取引条件の遵守を保証する唯一無二に近い有用なツールです。
しかしながら手数料や手続きの煩雑さからだと思われますが、売り手からも買い手からも何か敬遠されている様に感じています。
だから特に信頼関係ができたら電子送金などが通常になっていく訳ですが、問題はそれまでどうしたら良いの?…と言うことだと思います。
今後はブロックチェーン技術により、銀行が発行するL/Cよりも手数料が易く簡単に国際取引が実現されると期待されています。
…だからもう少しだけ、グッと面倒をこらえてL/Cなどと一緒に頑張っていきましょう!